2017年06月

2017年06月19日

我等、恋の三銃士1話・お父様は心配症

あの世とも黄泉の国とも、極楽浄土とも言う死後の世界。
ここは幻獣界とは逆に、時間の経過が遅く緩やかだ。もう死者は歳を取る事は無い。
この日もこの何処かでは、一人の男の大声が幾重にも響きわたる。

声を聞き何事かと、それを見に来た知人の男は….唖然とした顔で声の主を見ていた。


クッ、情けない。何をやっている、我が息子ながら情けない!それでもバロン男子か。

しっかりしろ、カインーー!

私の声が聞こえるかーーーーー!

叫ぶのはプラチナブロンドを長く伸ばし結いた、眼光鋭く細身の引き締まった体格、
凛々しい顔立ちの男。下界の生きとし生ける世界に、聞こえるかーと叫ぶのは、男の毎日の日課となっている。

やれやれ、またか。奥方に主人が止めてくれないから困ってると相談されたが…
ここの世界でも生きていた頃と変わらず、この人は何をやっているのだろう。はあ~っ(溜め息)
よく飽きませんねーあなたがここで吠えても声は届かないのですよ。
もう我々は死んでいる、奥方が大層困っているから止めてください。

見に来たのは、癖毛の茶色い長髪をまとめガッシリ体型な、甘いマスクの男。

ファレルよ、わかっている、わかっているが、なんとなんとな!私の息子が女子から告白されたのだ!
しかも息子も女子に好意があり、お互いにフォーリンラブなのだ。 私は父として、何とかしてやりたい。
甘いマスクの男は、ファレルいう名前だ。

ぷぷぷっリチャード、あなたの口からフォーリンラブとは…おっと失礼ぷぷっ。何とかしてとは?
ファレルを可笑しくさせ、吹き出させた男はリチャードという名前。

おい、笑うな!決まっているではないか。私はな…あの二人を恋人として、カップリングさせたいのだ!

ええええー!おやおや…リチャードから思ってもない予想外の発言だ。正気ですか?

私は正気だ、そして本気だ。息子カインの行く末が死んでも心配でな。
妻は早くに死に、私も息子が幼い頃に死に、独りになったカインが心配なのだーウウウウウ(涙)

うーん…どうしたものか。この事は頼りになる「あの人」に相談しよう、そうしょう。

リチャードはかつて生前、青き星の大国バロンで竜騎士だった男だ。
彼と話していたファレルも、同じく竜騎士だ。2人は竜騎士団の隊長と副隊長という地位だった。
この2人、先祖代々で竜騎士を輩出してきた名門貴族出身。
リチャードこと、リチャード・ハイウインドはハイウインド家の出。
ファレルこと、フィリップ・ジョシュア・ファレルはファレル家の出。そう、この2人...
リチャードは竜騎士カイン・ハイウインドの父、ファレルは白魔道士ローザ・ファレルの父、
悪の手から青き星を救った英雄の「お父さん」なのだ。

ファレルは「あの人」に会いに、ある場所へ向かっていた。この死後の世界にきて、
偶然か運命か出会い、友人になった「あの人」と自分。解ったのが互いの息子と娘が
思い思われの両思い。共に悪を倒す戦士として幾多の戦いを経て、強い絆で繋がり結ばれたと。
今のリチャードの勢いは、ハイウインドの先祖達でも妻のエリナでも、ファレルでも止められない。
考えながら歩くと「あの人」がいる、大きな両扉の近くに到着した。
7色に輝く泉、数本ある赤と青の実が実る木。この世界の玄関口「ヘブンズドアー」と呼ばれる。

『来たね、いらっしゃい。フイリップ』ファレルを名前呼びする、穏やかな男の声が出迎えた。
『こんにちはクルーヤ、あなたにお話しが有り来ました』相手はファレルとは友人らしい。
『ふふ。話とはあの坊や、リチャードの事だろう?』『流石クルーヤ。そうなのです』
『そうかい、じゃ居酒屋・月のウサギにようこそ。ビールに枝豆でもつまみながら話を聞こう』

このクルーヤという男は、月の民にして現バロン王セシルの父である。
リチャードにファレルにクルーヤ。この3人が出会った経緯は後々に語るとして、


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー人間界でー

ミシディアでは一人の男が、ある女性から「告白」されていた。
『私、カインさんが好きです。その…駄目ですか?あなたの側にいさせてください』
(この展開どうすればいいんだ、どうしょう、心の準備が出来て無い何と答えたら、い…いいんだ!)
心の中で焦る男はバロン国・聖竜騎士カイン。相手の女性は、ミシディアは白魔導士ポロム。
任務で来たカインは緊張した面持ちのポロムから、話があると呼ばれ「告白」されたのだ。
ポロムへの好印象は高いが、告白されて嫌では無い。嬉しいけど女性への対応力が少ない。

『お返事は急ぎません…答を待ってます。それと…カインさんの後ろにいるお2人は、どなたですか?』

『ああ。死んだ俺の父とローザの父だ…ってなあーにいー!』後を振り返ったカイン驚く。
なぜか、死んだはずの父リチャードと…子供の頃に可愛がってもらった、ファレルおじ様。
ファレルはバロン王妃ローザのお父様だ。なぜ俺にゴーストが見える?でもポロムには?
『よかった、俺以外にゴーストが見えるなんて!霊感があるのか?』
『霊感というよりは、ミシディアは魔法を使う魔道士の国。なので魔力でゴーストが見えるのです』


『妻から聞いた事があります。ミシディアの魔道士は死んだ人間が見え、話が聞こえると。
リチャード、あのお嬢さんに我々が見えるとは非常にラッキーですな』
『うむ。見えるとあらば好都合!我が願い、早速お嬢さんに直談判...』
『おやめなさい、いきなり早すぎる』『何をする、早くないわ!私を離さんかー』
カインの後を見える2人のゴーストは、リチャードがファレルに羽交い締めされていた。

『ここはお嬢さんに我々が危害を加えない、恐ろしくないとアピールするんです』
ファレルは生前に数多くの女性を魅了し、失神者が絶えなかったという伝説の微笑み。
「キラースマイル」をポロムに向けて笑う、白い歯がキラリキラリと光る。
ポロムはこのゴースト...自分の知るバロン王妃様の「お父様」がする、優しい魅惑の微笑み
にペコリとお辞儀をする。もう一人のゴースト...聖竜騎士の「お父様」は笑っているのか、
眉間に深い縦皺の鋭い眼光をしてポロムを見ていた。
『父様…止めてください』『お嬢さん、この人は怒ってるので無く笑っているんだよ。君みたいな素敵な女性に会えて、嬉しいんだってね』リチャードはファレルを睨むも、ファレルはスルーする。
『はじめまして』ポロムからリチャードにもお辞儀する。カイン口をポカ~ン。

そこに悲鳴声がする。一匹のズーが白魔導士を狙い、鋭い爪を向け襲いかかる。
『ムムッ、女性の悲鳴!カイン、ファレル、行くぞ!』『助けに行くって、あの…』
『私達がゴーストだからと言って、問題無し!借りますよ』『うむ、ネコよ借りるぞ』
ファレルは飼われているオオカミに似た犬に憑依、リチャードは野良の三毛猫に憑依した。
『えー!これはありなのか』『お父様達、すごい!』

『キャット空中大回転―!ネコ騙し!からの、くらえい!にゃんこヒップホップアタッーク!』
(ネコ一匹の力ではダメージが少ない!この小さな体では…)
『ファレルよ、私を高く投げろ!キャット大ジャンプの~~ネコノツメサンダークロウ!!』
『リチャード、私も跳びます、跳びます!ウルフビックダイブからの~オオカミノツメアタック!』
ネコ一匹がモンスターの両目を潰し、オオカミ犬はモンスターに飛びかかる。

『ファレルよ、あれをやるか』『あれですね、やりましょう!』
ムーンプリズムパワーメイクアップ。ドラゴンチエンジ!!
オタスケレンジャードラゴンレッド、ドラゴンブルー参上!!
悪さするズーにお仕置きだべさ!!くらえ元祖クロススラッシュ!

リチャードとファレルは、装着した変身ベルトで竜騎士オタスケレンジャーに変身。 
リチャードはレッド、ファレルはブルーだ。二人は同時に高くジャンプし、何回か槍で貫く。 
三毛猫とオオカミ犬から竜騎士に変身した、ゴーストの攻撃はズーに大ダメージを与えた。
リチャード&ファレル『お前はもう、死んでいる。』チャララ~ン、ズーを倒し55の経験値!
103ギルを手に入れた。タララララララー♪

『ポロム様、カイン様、犬猫さん、助けてくれてありがとう』『大丈夫ですかアンジェラ』『この白魔導士、…本当な男だった‼』
『ファレルよ私達が助けたのは、お姉さんでは無く』『オネエさん…オカマさん、でしたね』

バロンに帰国したカインは、仕事を早めに終わらせ帰宅。
(いろいろ有りすぎて疲れた、しんどいから早く休もう…)
ベットに入り横になるも、昼に見たゴーストが気になり寝つけず。
右向きに左向きに体を替えゴロゴロ。あお向けでも、うつぶせでも、コロコロ。
やっと寝ついたのは、真夜中を過ぎた頃だった。

カイン、カイン...もう朝になる、そろそろ起きるのだ。これでは寝坊助さんだぞー

『もう朝か、昨日は驚く事があって夜は眠れなかった...起きて毎日日課の鍛練をしよう。
父様の声が聞こえた気がするが、ハハハこれは気のせいだ。』
いいや、カインよ...気のせいでは無い。私はお前の側にいる、よーく見なさい。
『ハハハ、死んだ父が側にいるなんて、そんなのありえん。』
倅よ、父の言う事が聞こえなかったのかー父を探せーーー!
『ヒヒッヒイーーーー分かりました、探しますよ!』カインは震え怖くて泣きながら、
父を探しに部屋内を見ると...よく見ると。

夜明け前のカインの薄暗い部屋、亡き父リチャードが赤色の竜騎士鎧姿で、
ベットにいるカインの至近距離で立っていた。その距離は10センチぐらい。
『うぎゃぎゃやややああああーーーーまた、なぜいるんですかぁぁーーーー』大絶叫カイン。
『よいではないか、来ちゃった...だぞっと』昨日白昼に見て、今朝も見たゴーストの父。

何やってるんですか!そんな登場がありますか。
また何処かで聞いた声。『この声は...ファレルのフィリップおじ様。どうしたんですか』
もう一人のゴーストこと、王妃の父ファレル。2人のゴースト揃い踏み。
父リチャードは、怖がっている息子に構わず話を続けた。
 
『カインよ聴いてくれ、完全に音痴が治った私の唄う歌を。二人ともバックコーラスを頼む』
『わかりました、思う存分歌ってください』『まかせるですとも!ミュージックスターウォーズ』
(3人?ゴーストは3人か?)カインが怪しんでいると、何処から白い光が現れ音楽が聞こえてきた。

♪降り注ぐ雨は、美味しい水になる-♪人間界に降りた私達。光が優しく励ますよ、
「宝物」に会いなさいと。♪喜び、嬉しくて、姿を隠さずに。現れた私達がいるのだー
♪♪ありのままの~姿見せるのさ、ありのままの~お父さんだよ。
ゴーストだ~け~ど、君と一緒にいたい。

♪心配さ、君が大人でもね。だっていくつでも可愛いのだよ。
大事な「宝物」の力になりたいのだ、それを望んでるーこの私。
ありのままで~愛を伝えたい。ありのままで~ゴーストだけどね。君が大切、愛しているよ。

♪痛みも苦しみも通り抜け、高く跳ね上ーがり前を向いーて。
風に折れぬ柳のように、強くいておくれ「宝物」よ。
これでいいのだ、私が憑いている。これでいいのだ、私達が憑いている。
♪♪光と、共にあれ~歩き出そう~私の「宝物」よ。

あの敵を傷つけずに懲らしめ降参させる、その歌声は戦術武器より強いと言われた音痴な父。
その父が音痴が治り、美声で歌っている。歌い終わったゴースト達はカインに向き合うと、
『ということで息子よ、私とファレルは此処にしばらく厄介になるぞ』こう言った。
ゴーストが厄介になる??何を言うのだ?カインますます混乱。

『カイン、よろしく頼むよ』ファレルも、カインの左手を握手し笑って言う。
『カインよ、私からも2人を頼む』そして、一緒に歌っていた白い光からも声がする。
『貴様は誰だ?』光に叫ぶカイン。『息子よ何を言う!我々の大恩人のクルーヤ殿だ。』
恩人を貴様発言した息子に、リチャード睨みつける。どういうことだ?カインぶつぶつ。
『クルーヤと私達は、あの世で知り合ったんだ。私とはセオドアの祖父同士、お互い義理の親戚だね』 
ファレルが言うと光から姿を替え、3番目に現れたゴーストは、父とファレルよりも背が高い壮年の男。
そして、ガッシリな体格の男だった。戦士とも格闘家とも名乗っていいくらいの。

『何だと...この人が、あのクルーヤ殿?え、えええええーーーーー!』カイン、再び大絶叫。
『父様とおじ様は、いったい何しにきたんですか!まさか...俺を呪う気ですね?』
『はあ?するわけなかろう。私は生前にやり残した事を叶える為に、ここにきたのだ』
あの父が生前やり残した事があると、カインは考えられない。恐る恐るもう一人にも聞く。

『あの…おじ様もですか?』ファレルは父とは反対に、白い歯を見せ優しく笑う。
『ああ、私もそうだよ。それと妻とローザ、セシルとセオドアに会いたくてね』
『私も、おじさんも同じ父親として、2人の望みを叶えてあげたい、協力したいんだ』
自らをおじさんと呼ぶクルーヤが、父とファレルを援護する。
父とファレルにカインは一応、どんな望みがあるのか聞いてみることにした。

『うむ。私はな...これこれこうで。あーで。ペラペラ』『私はあれしたい、これしたいペラペラ』
二人のゴーストの話を聞き、カインは思った。(ファレルのおじ様のは何とかなりそうだが、
父の方は非常に難しい重要問題がある!どうしたものか...)と頭を悩ましていた。

『んじゃ、そういう事でよろしくー』クルーヤにまで頼まれ、ひょんな事から父・リチャードと、
ローザの父でセオドアの祖父・ファレルという、ゴースト2人と過ごす事になったカイン。
いつまで同居?同棲?これからどうなる?
≪続く≫




trkeko at 06:07|PermalinkComments(0)捧げ物