カイポロ

2019年02月03日

クルーヤの秘密の魔法

ふふふ。いつも頑張っている君に、私のとっておきの"夢の魔法"を見せよう。
では竜騎士カインの所に、クルーヤがぁ~~~
くる-ーーーーーーーー!!いい夢見るのだぞ。おやすみ坊や……


ある晴れた日の午後。ここバロン城では一人の男がぼんやりした顔で、
部屋の開けた窓から景色を見てぼやいていた。

『こんな日に仕事なんてやってられん。あー今日は仕事じゃなかったらな、
仕事じゃなかったら…そうだ外に行こう!森林公園がいい。雲一つない青い空、
新緑と鳥のさえずりと川のせせらぎ、癒しの空間だ。バスケットに本と冷えたワイン。
好きな食べ物にオツヤはフルーツサンドイッチと。とっておきの紅茶に、
ハンモックも忘れずにだ。そして誰にも邪魔されない、自分だけの静かな時間。
読みかけの小説を見て、食べて飲んで眠くなったら寝ると。それいいな…いいぞ…
ふふふふ。っておい、現実逃避するの何十回目だ!どうした俺!』

部屋で一人ぼやいていた男は、赤き翼の部隊長カイン。
オツヤはオヤツの事で、そうバロンの名門貴族は子供の頃から呼ぶ。…呼ぶのは彼だけ。

彼が現実逃避したい理由。兵士の訓練に事務仕事に、世界の復興支援やら、
いろいろとエトセトラーーー忙しい毎日を送っている。
今春バロンに咲いた桜は、ゆっくり見ぬ間に風に散り緑葉に。毎年恒例・花見の宴もできなかった。なので合間に違う事を考えたりして、気を紛らわせている。

『おい、カインいるか?僕だよ。入るぞ』入ってきたのは国王セシル。

もともと国王は色白の美男だが、近くで見ると顔色が悪い。こちらもお疲れの様子。
『国王直々に何の用だ?誰にも頼めない事だろ…』カインは睨みながら言う。
『流石、そのとおーり。困った事態が起きているのさ』青白い顔で答えるセシル。

幼い頃から付き合いの長い国王や王妃頼んでくる用件は、いつも嫌な予感がする。

今年の新年会に、4月の「新人さん、いらっしゃーい会」と称した城の宴会で、セシルとカイン2人の聖騎士コンビ「あてまか~ず」による、歌と踊りありのコントをやった。城内は大盛り上がりで拍手の嵐。

3月のおつかれさん会では、特別ゲストにエブラーナ国王エッジも参加。エッジと「あてまか~ず」と一緒に、3人トリオ「エ・カ・セ」の即興漫才を披露して、人々からは大喝采の大好評。

カインはあんな事こんな事を頼まれ、何故自分だ?と溜め息ばかり。セシル・ローザ夫妻と、息子セオドア、親代わりのシドの頼みは断れない。自分を家族同然に慕い慈しむ、故郷バロンの大切な人たちに。
つい聞いて引き受ける所は、自分は人が良いなと思うが、過去への罪滅ぼしもある。
セシルよ、今度は何を頼むのか?早く話せと椅子に座り待ち構えていると、
『お前さ、前に僕とローザが話していた事…どう考えている?』真剣顔のセシルが問う。

ある日のセシル達との昼食後//////

『最近、しつこく大臣達に聞かれるんだ。カイン殿はいつまで独り身でいる?結婚しないのか?もしや女嫌いで同性が好みなのか?訳ありでも娘との見合いを申込みたいとさ。苦いから1個入れようっと』
『人を言いたい放題して、また見合いの話か…だが断る。セシル俺にも入れろ苦いばかりだ』

『ねえ...あなた達、コーヒーに砂糖をどれだけ入れるの?どんだけ!!』ローザが夫とカインのやり取りに驚く。二人の男は甘~い角砂糖を、10個以上も入れていたのだから。
『もう砂糖湯です…』見ていたセオドアも口を空け茫然。『えっ、この飲み物は何処がいいのかい?』『フッ、この俺のグルメで繊細な舌に合わんな』ローザは中年男達の発言に、無表情で怒りの炎を出した。そんな母にいち早く気がついたセオドアが、青ざめガタガタ震える。

『父さんとカインさん、そんな事言わないで下さい!ヒィ~母さんが怒った!』セシル・カイン『!』
『何て言ったの…?コーヒー飲みたいって言うから、ダムシアンから取り寄せたのよ…そんな事を言うなら、あなた達に飲ませるコーヒーは無い!!』ローザは強く拳を握りしめ、げんこつをゴツン!ゴツン!中年男達はたんこぶを作り倒れた。
ローザ様の機嫌がなおるまで、しばらくお待ちください…


カインが多くの見合いを断る理由は、彼の地位と名声に群がる者達から、権力闘争に利用されたくなかった。国内の混乱と争いは避けたい、自分が原因で誰かが悲しむのは見たくない、もう懲り懲りだ。
それは表向きの理由で、自分の恋愛事に怖くて躊躇している。聖竜騎士となっても、世界で二人目のパラディンと呼ばれても。この悩みを聞いた誰かは、「いい大人」が何だと苦笑するだろう。

かつて恋していたローザへの思慕が消えるのに、十数年もかかった自分。今のセシルとローザと自分は、幼馴染であり大切な友であり、「独身の兄を心配する弟・妹夫婦」のような関係にもなっていた。

若い頃セシルを愛するローザを忘れようとして、好きでもない女と関係を持っても、心の隙間は埋らず。一層深く暗い穴が続くばかりだった。この先、自分が誰かを愛する事が出来るのか?自分という男を愛する女性は表れるのか?考えられない。出した結論は、もう俺は誰も愛さない方がいいのだと。

でも…あの少女ポロムは、16も年下の娘はいつも会うたびに、見ていて愉快で可愛くて飽きない。ミシディアに行くのが密かな楽しみにしている。ポロムには失礼だが会って話をすると、ついからかってしまう。彼女の反応が可笑しくて、こらえきれず大声で笑っていた。陽の様に温かく優しいポロムが気になって。

『あーそうだわ!昨日エブラーナに行って、エッジとリディアから良いこと聞いたのよ~ふふふ知りたい?』ローザの話が気になり、耳を傾けるダブル中年男と一人の少年。

エブラーナ国王夫妻によると、ミシディアの黒魔導士・パロムが言うには、双子の姉ポロムは恋をしている。相手はバロンの聖竜騎士カイン、彼がミシディアに来る日はそわそわして落ち着き無く、お洒落に着飾り綺麗に化粧をしている。カインを見る顔が違う!何度もあったから間違いない!あのおっさんの何処がいいか謎だ!と。エッジとリディアは、『やっぱりポロムの好きな男は、カインだったか~可愛い子に好かれるなんてラッキーね』と話し、ローザと盛り上がった。3人はパロムの話に確信したという。

『本当?いや~カインよかったな』『僕も父さんと同じ意見です、ポロムさんは素敵なお姉さんです!』セシル・セオドア親子は喜びし、話を持ち出したローザは『そうでしょう?私が男性なら即お付き合いするわね、カインに春が来てくれて嬉しいわ。相手がポロムで大歓迎よ~』涙ぐみながら言う。『ちょ、ちよっと待て、相手は16も下だ。そんな事は有り得んな…これはドッキリか?お前達は俺を騙してるのだろう?きっとそうだ!』カインはローザから聞いた話が信じられなかった。
そんな彼に一家は怒る『は...?ドッキリじゃないよ!!』『言っていい事と悪い事があります!』
『ちよっと何言うの!カインは老後の世話をセオドアにさせたいの?自分の人生よく考えなさい!!』一家の迫力に黙るカインは、床に正座して足の痺れと説教に絶えていた…

その事が事実ならポロムに話さねば。『未来ある若い女性が、俺を好きになってはいけない。君に俺は相応しくない男だ』ポロムに話すのは辛い、笑顔が似合う彼女の悲しむ顔を見ながら。

そう思い、今に至る////

『困った事態はな。見合い話にお前の返事が無いから、待てないと痺れを切らした大臣達は、仕事を放棄してしまったんだ。登城しません、職務拒否します!とさ。参ったね』セシルは溜め息をする。
『それは本当か?』カインは驚く。『ああ。でも彼らの対応は僕にまかせてくれ、ふふふ、ふふふ…』お怒りの陛下、暗黒オーラを出しながらもニコニコ笑顔。カインも機嫌が悪いと黒色オーラを出すから、聖騎士同士お会いこ。
『セシル、すまん』『お前は悪くない。僕は…僕とローザはお前には、心から好きになった女性と結ばれて欲しいと願っている。うう...だからポロムを気にかけてあげてくれないか?頼む。あの子はいい子だよ』涙と鼻水を流す泣き顔セシルから言われ、どうしたものか悩むカインだった。

セシルが部屋から去った後、一人になるなり疲れが襲う。椅子から立ち上がると体全体が重苦しく、めまいがして足元がふらつく。ソファーで休もうと歩くも、床に崩れ落ち気を失った。


『…聞こえてますか?気分はどうですか?』聞いた事のある声に反応して目を開けると、見えたは自分専用の執務室。カインはソファーに寝かされていた。
『ここは何処だ?』側に座るす人の姿を見つけ声をかける。すると『まあ、気がつきましたか?』女性の声だった。自分はこの女とどういう関係だ?恐る恐る聞いた。『お前は誰だ?モンスターが人に化けたのか』側にいる白いブラウスに、青みがかかったピンクのスカート姿の女性は笑って、『ふふふ、私はあなたの妻です。化けてませんから!もう可笑しいわ』左手の薬指にはめた指輪を見せる。

俺の妻だと?いつ結婚したのだ?夢とはいえ信じがたい。『あなたも見て下さい』女性がカインの左手を上げると、自分の薬指にも指輪がある。『これでわかりました?』女性の白い手は温かく軟らかで、ほっそりした指先は赤く塗られている。唇は桃色のルージュが艶やかに塗られ、後ろ姿だが茶色の髪を結い上げた、うなじに見とれた。顔は見えないが妻だと名乗る女が、益々気になる。
『俺はいつ結婚したのか?』カインは女性に聞くと、『忘れたんですか?もう10年以上前ですよ』何だとーー??では、ここの俺は40代半ば辺りか。ここは夢か現実か?気になるからまた聞く。『10年以上とは…もしかすると君との子供がいるのか?』女性は笑って『いますよ、このくらい』
手で人数を表した。カインは『そうなのか?ハハハ…これは賑やかだ』苦笑いし、顔の見えない女性を見る。細身ながら女性らしい曲線、スカートから覗いた白い靴を履く足は美しい。

先程のうなじといい、カインはゴクリと唾を飲み込む。この女の顔を見たい、どんな女が自分を好きになり結婚したのか?女性に『君は俺の何処がよかったのか』と聞いた。

コホン、と咳払いした女性はゆっくり話す。『ふふふ、あなたの事は昔から知っていました。無愛想であまり話さず、甲冑姿の怖いおじさんと思っていました。何を考えているか解らない、不思議な人だったけど。森で動物と話している姿は、とても綺麗で物語のプリンセスみたいでした。それから優しい方とわかって、沢山お話をしました。楽しくてお兄さんみたいで、とっても嬉しかった。いつしかあなたへの好きという気持ちが、お兄さんとしてではなく、違うものに変わり…もやもやして落ち着かなくて、時間がかかったけど。いろいろ考えて解りました、私はあなたに異性として、一人の男性に恋をしたと。』

『俺を昔から知っているだと?誰なんだ』『まあ、私を忘れたの?よく話の続きを聞いて下さいな』
話の推測からすると、彼女は年下の女性であろう。話の続きを待つ。おじさんと呼ばれガックリだ…

『あなたを好きと解ってから身内に、あの男の何処がいいのか?根暗で陰険っぽいから止めた方がいい、と言われ頭にきて口喧嘩をよくしました。でね私、そんな事は無い。素敵で優しい良い人だ!って言い続けていたら、身内も折れて密かに応援してくれました。珍しく結婚式の時に号泣したんですよ』
自分が根暗で陰険とは、そんな風に捉えられてるなんてショックである。カインがそう言われたのは今に限った訳でないが。自分が女性から「優しい良い人」なんて言われたら、実はとても嬉しい。
『あなたが気になって、頑張って話しかけたんですよ。接してみると実は無器用で繊細な人。あと寂しがり屋だなってわかったんです。でもね話しても言葉は短くて、そっけなくて、何かとからかわれてばかり。諦めた方がいいかなと思ったとき、不思議な夢を見ました。夢の中で白い光が私を励ましてくれたんです、君の真っ直ぐで一途な思いは、ちゃんと好きな相手に伝わっている。向こうは嬉しくて恥ずかしいのだよ。大丈夫、自分の気持ちに自信を持ちなさいと。それから諦めずにいたら……突然あなたから好きだと告白され、お付きあいして結婚しました。そうなって私とっても嬉しかった…愛する人と結ばれて、お嫁さんになって、大好きな人の側にいられて幸せです』話終わり、恥ずかしそうに頬を赤くする女性。

この自分が女性に告白して、付き合い結婚した。いや、夢を見ているからだ。不思議な夢の中で。

『カインさん、解りましたか?私、あなたをお慕いしています、昔も今も。それは覚えていて欲しいですわ。あなたを愛してます』正面に、ずっと見たかった女性の顔が見えた。
その女性は、カインのよく知る……の顔をしていた。気になる「彼女」の顔で。
『私を忘れないで下さいね』女性はそう言い、カインの額に口づけし優しく微笑んだ。

『君は、君って、あの、その……だったのか!』カインは驚きソファーから起き上がったが、
また急に強い眠気が押し寄せ、両のまぶたを閉じた。



カイン、カインよ…見た夢はどうだったかな?そなたの見たのは、未来の自分だ。
兄弟と同様、白魔法と黒魔法両方使う私の、とっておきの「時の魔法」だよ。
私の息子達を助けてくれて、私の愛する青き星を守ってくれてありがとう。
お礼も兼ねて、私はそなたがどうしているか気がかりなのと話したい事があり、こうして現れたのだ。

(は?俺が気がかりだと?何者だ、姿を見せろ)謎の声で気がつき、目を覚ましたカインは叫ぶ。
ふふふ、じゃあ~ミュージックショースタート!いくぜ、カモーン!!
目を開ければ、そこにいるは真っ白な空間。上から一筋の白い光がカインを照らす。
『ここはどこだ!おまえはなんだ!』カインは光に向かい怒鳴ると、なにか聞こえる。
『そなたに捧げよう、私からの人生賛歌を聞いてくれ。♪♪ルルリラ~ルルルン~♪』
男の低い艶のある、ミュージカル俳優や歌手に負けず劣らずな美声で、光から歌が聞こえた。

『♪この僕は恋愛に臆病な男なのさ~それでも僕には~愛しい人がいーるのさ、ラララー♪恋をした竜騎士は~風のようにフワフワしてるーきっと恋しい人に~会いたいのだろうーそうだね!僕の一番恋しい人よ~君が好きと伝えたい~そして君を離したくない強く抱きしめた~い♪』どこの唄の歌詞か?光が考えたのか?歌詞の内容は自分の事か?と混乱する。しかし、いい歌声だと聞き惚れていた。

『うああぁ~なんで光が歌っているんだ!?』カイン、口をポカーン。
『やぁ、始めましてでもないね。この声で私が誰かは覚えているかな?』光はカインに尋ねてきた。誰だ誰だで眉間に縦じわを寄せ、ますます混乱。よく耳を澄ませば、聞いた事のあるような...記憶をたどっていくと、ある人物が浮かんだ。その人物は……
『えっ…もしかすると、あ、あなたはあのクルーヤ殿なのですか?』カインが光に問うと、優しく答えた。『ふふ、そのとおーり!そうだよ。私は月の民クルーヤ、試練の山で我が息子セシルと、そなたに聖なる力を授けた者だ。そなたの事はいろいろ知っているぞ、私の姿を見せよう』光はカインの正面に近寄ると、人の姿になった。目の前に現れたのは予想を超えた.....自分よりも高い背の男だ。

『あの、あの、クルーヤ殿ですよね?』息子のゴルベーザに似た、筋肉隆々な背の高い男。
年齢は40代半から50代あたり、白いロープ姿の短髪で顎髭を伸ばした月の民。親友セシルの父でもあるが、穏やかな優しい顔にマッチョとは!セシルもそうだがゴルベーザといい、少年ながら力持ちなセオドアといい、月の民の血恐るべしである。カインは震えビクビクするのだった。

『おやおや、そんなに怖がらなくていいよ。おじさんの近くにおいで』クルーヤの微笑む顔が、セシルに似ている。『は、はあ…』カインは自分の過去にした事に、クルーヤが怒って罰を与えようと現れたのだと思っていた。白か黒かの魔法で?太い腕から振り下ろされる拳でパンチか?脚蹴りか?関節技か?
あなたからの罰を、俺は喜んで受けようと強く目をつぶると…そんな事はすること無く、
『君は恋をしているねー自分ではそれを認めたくないのだろ?』クルーヤはいたずらっぽく聞いてくる。

『違います!俺は恋なんてしていません。あなたの戯れ言です』カインが否定すると、クルーヤは優しい顔から一転。怖いモンスターの様な形相になった。腕組みをしたとたん空と地はゴゴゴと響き、大きく揺れ、立っているカインも揺れる。『そなた、私になんと言ったのだ?私は本当の事を言ったのだぞ!』
クルーヤは、長男の「いあつ」を出して怒る。『ひぃ~すみません…本当です』怖いが謝るカインだった。

『ああ、嫌だ嫌だ。おじさんガッカリだよ、それでも男の子か?この軟弱者!いつまで過去を引きずるのだ?ズルズル君と呼ぶぞ。あっそうそう。息子の嫁の父君から、自分の昔を思い出しますー君の恋をおじさん応援しているよとな。』息子セシルの嫁=ローザ、父君=亡き竜騎士で妻はミシディアの白魔道士だ。妻は存命してバロンの城下町で暮らしている、捕まると話が長くなるセオドアの祖母である。あの世でローザの父親と知り合うとは死後の世界もわからんと思う。

『俺をズルズル君なんて言わないで下さい。誰も好きにならない、そう決めたのです』
『まあまあ、そなたのご両親からも伝言を預かってきたぞ。聞きなさい』早くに死んだ自分の両親もだと!クルーヤはローザの父親だけでなく、父と母とも知り合うとは...恐ろしくてゾクゾク震える。『母君は...カインはやればできる子!諦めないでとな。父君は...この馬鹿者め。好きなら嘘をつくな!!男なら根性で告白だと。そなたは死んだ両親にも愛されているじゃないか。愛する資格がないだと?そんな事は口にして言っちゃあ、よくないぞ』クルーヤが口を尖らせる。

『そなたが恋をするのはダメだと、どこの誰が言ったのだ?頑なな気持ちの、そなたの思い込みではないのか?そう考えるのは終わりにしなさい。そなたは娘に愛されて良いのだよ。人生には悪い事も良き事も全て無駄では無いぞ!人は誰しも過ちはある…その事にこだわり続ければ幸せになれぬのだよ。私も青き星に来た若かりし頃はな…いろいろ人に裏切られ、人が信じられなくて荒れた生活をし、人を避けて過ごしていた。そんな生き方を変えたのが...ある女性との出会いだったのだよ。あのときの彼女は可愛かったねえーふふふ』クルーヤが照れた様に言うと、カインは彼にしては珍しくピーンときた。きっと、その女性は大切な人。
『セシルとゴルベーザの母親ですね』そう言ったカインに、クルーヤは『そうだよ』と答えた。

『セシリアと出会って、お互いに愛して。一人だった私は孤独から抜け出し暗い世界から、明るい世界へと入ったのだ。そして家族が出来て、私が死ぬまで幸せだったね。カインよ、今までの過去は変えられないが、これからの未来は変えられるのだ。後ろを振り返るな!前ばかり見るな!しっかり両の眼で今を見なさい。数奇な運命を経て試練を乗り越えた、今のそなたなら大丈夫だ。自分に誇りと自信を持ち、そなたを慕う心優しい白魔導士の娘の気持ちを受け入れるのだ。そなたは娘を愛する事ができるよ。一緒に幸せになるのだぞ、さあて、歌のクライマックスといこうか!!』
クルーヤは両腕を大きく振りながら自作自演の歌を歌う。
『♪あの日あの時、あの場所で二人は出逢わなかったらー♪いつまでも寂しがり屋の竜は一人ぼっちだったのさ~♪♪乙女は竜に愛を捧げ~♪竜も乙女に心開きー愛して愛されたのさ~カイン、そなたの事だ!♪♪君は一人ではない~友や仲間がいるだろう♪闇を切り抜けー茨の道をくぐり抜けー君は試練に打ち勝ったヒーローだ!君は今、光ある世界に立っている~愛する人の手を離さず掴み~人生を共に歩むのさ~君に幸とー栄光あれ~♪カインよ、さらばだ!!』

長男同様「いあつ」と背丈があり、次男と同じく優しい顔にガッシリ体型の、クルーヤの姿が消え周りが暗くなり、再びカインは意識を失った。また眠りに付く….

気が付いて、ゆっくり目を開けると空は薄暗くなり、夜も近い時刻になっていた。
頭の下には心地好い感触、床に倒れたはずなのに、いつの間にこんな極上の枕で寝ていたのだろう。この上質な枕は城の備品か?これは自分が買い取るかと触ると…温かくて柔らかい。『これは人間の体か?誰だ?』体を起こして振り向くと『あれ?何故、君がここにいるん...』
自分が枕だと思っていたのは、枕でなくて『え、えええ!俺は、俺は何て事をしたのだー』カイン大声で絶叫。ソファ-に座り、うたた寝をするポロム。寝ていたのは彼女の膝枕でだった。
『ん、んーあれ?私ったらいつの間に寝ていたのね』その絶叫の声で目が覚めたポロム。
『ポロム、君がなんでここにいるんだ?』大慌てで動揺のカイン。『今日はバロンとミシディアの交流会の打ち合わせで、会う約束をしてたんですよ。もしかすると忘れてました?』ポロムはムッとして言う。そう言われてカインは壁のカレンダーを見ると、今日の日付に大きく赤丸があった。『すまんな、そうだった』思い出すと数日前、セシルとローザから交流会をしたいから幹事を頼まれた(問答無用で押し付け)が、どうすればいいか困っていたらポロムに声をかけられた。『私もパロムの代わりに幹事をやる事になりました、よろしくお願いしますね』と。 忙しく急いでいたのもあり、心強い味方に『この日にバロンに来て欲しい』そう約束して赤丸までしたのだ。言われるまで忘れていたが。


『いいです。カインさんが無事でよかった…倒れていたから何かあったのかと心配しました。レビテトの魔法でソファーに横にさせましたが…顔色を見ようと近くに寄ると急に腕を引っ張られて、あの…膝枕に。困っていたら、そのまま私も眠ってしまいました。何にも無くてよかった…』ポロムの両目から涙がこぼれた。
自分を心配して、自分の為に流したポロムの涙。
お節介にわざわざ現れて、いろいろクルーヤの言った様に、怖がりだった自分はこれっきり。
少しずつ前向きに歩んで行こう。カインはクルーヤに励ましと勇気をもらった気がした。

『さて、もう夜になるな。よかったら夕食を一緒にどうだろう?膝枕の詫びもしないとな。今の話は君が嫌でなければだが』カインはポロムの顔を反らさず、ポロムの目を見ながら話した。
『まあ、そんな…嬉しいです。いいですよ、喜んでご一緒します』ポロムが自分を見つめながら、穏やかに微笑むと、つられて微笑むカインがいた。『ありがとう...ポロム』

それから、それから、この2人がどうなったかというと。
バロンとミシディアで、頻繁に相手の元を訪ねる、カインとポロムの姿を見かけるようになった。

バロン国王一家とミンウ長老は大歓迎、カインは見合いを強制されなくなって安心。
若き次の長・ポロムの双子の弟パロムは、皮肉を言いつつも二人の仲を応援する。
カインはミシディアの人々から、「ポロムの旦那様、ナイト様」と呼ばれていた。

また毎年には。暖かくなった春の桜咲く頃、緑豊かな初夏、梅雨の紫陽花が見事な時期。
暑い夏の涼し風吹く海岸、秋の美しい紅葉、冬の白い雪景色。
その場所には...手を繋ぎ道を歩きながら話をする、仲の良い2人も多く目撃された。

バロン城のカインの殺風景な執務室に、置かれるようになったのは。

子供の字で「とうさま、だいだいだいすきだよ」「とうさまみたいなつよいりゅうきしになる」
と書かれた手紙、絵や工作物が立派な額に入れられ、いくつも壁に飾られた。
暖色の小物と、机に異国で作られた花瓶。そこに四季の花が置かれた場所で、
鮮やかに咲いていた。それらをカインが大切な女性を思い、優しい顔で見つめていたという。
               

                
 


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見上げてごらん夜の星を 今宵バロン城にて。sideカイポロ

この話は…宇宙人の血をひく踊りが達者な聖騎士の話ではない。緑の召喚士と子育て中の童心を持つ忍者の話でもなければ、組織ぐるみで師の恋を手助けした宇宙人3代目の王子の話でもない。

話の主役は、訳あって故郷バロンを離れ十数年ぶりに帰還。竜の事は誰よりも博識で竜を愛し、国王一家の寵愛と信頼厚く家族も同然。民には尊敬と美丈夫ぶりと武勇伝を称賛され、世界中の人々から星を救った英雄の一人と讃えられる聖竜騎士の話だ。その名はカイン・ハイウィンド、ただいま新婚さんなのであーる。国の責任ある職務を離れ、自邸に帰れば新妻が優しく温かく出迎えてくれる。

彼が一目惚れし遠い他国にまで通い詰め、不器用な恋の末に結ばれた相手は…16歳も歳の離れた可憐な乙女。彼女の名は英雄の一人・ミシディアの白魔導士ポロム。双子の弟パロムと次代のミシディアを託された若き天才魔導士だ。国王夫妻に幼い頃から妹の様に可愛がられ、王子は姉の様に慕っている。

新年1月1日のめでたい日、カインに嫁いだポロムは姿声が優しく愛らしい、温かく包み込むような笑顔に明るく飾らない人柄で、民から親しみを込めて「ハイウインドの若奥さん」と呼ばれている。

執事ファミリーからは今まで「おじさん・坊っちゃん」、結婚してから昇格して「カイン様・旦那様」と呼ばれるカインには、彼の中でだが最も重要な悩みがある。忙しくてポロムとすれ違いが続いているのだ。

ある冬空の冷たい風吹く夜。ここバロン城の城内にある赤き翼・部隊長用の執務室では、一人の鎧姿の男が、渋い顔をして机上の積み重ねられた書類とにらめっこをしている。『今日もまだ仕事が終わらないな、帰りが何時になるか全くわからん。これで帰れないと3日目になる!』彼が物語の主役カイン。
職務が多忙ゆえに急な任務もありで、最近は帰りが深夜か早朝、何日間も自邸に帰れない事がある。なんて事だ!とガックリ項垂れる。ポロムと仲は悪くない、結婚してから益々好きなのだ。一緒にゆっくり過ごした日はどのくらいか?と両手を広げると、数えながら一つ一つ指を折っていく。すると思っていたよりも少ない!!折った数が右手で止まり、ますます項垂れ深く溜め息ばかりしてしまう。昼に城のメイド達が噂話をしていた、好き合って結婚したが互いの仕事が忙しく、仲は冷め早々に別れたという元夫婦の噂を聞いてしまった。自分達は大丈夫か?他人事でない。ううっ、これはどうしたものか…どうしたものか…どうしたらいいのだ…?どうしたら…どうしたら…どうしたもんじゃろのう…ブッブッブッブッブッ…
  
『失礼します、部隊長お先にって…うわぁ!下向いてブツブツ言ってるよ。これは大変だ、父さん母さんに相談だ!さあ、行きますよ』そんな師の姿を見た王子セオドアは、父譲りの馬鹿力でカインを引きずり両親の所に連れて行った。王の執務室には両親と一緒にシドもいて、4人はカインの様子に心配し取り囲む。『ポロムいつもすまん…うう見捨てないでくれ…』『おいカイン、どうした?』『一体何かしら?』『ほれ顔を上げんかい、ワシらに話すんじゃ』 『カインさん、スッキリしましょうよ!』

それから数十分後…セシル達に話を聞いてもらい、気持ちが落ち着いたカインは自分の執務室に向かっていた。『ん?あの後ろ姿はポロムか?』先行く人物の姿を見かけ、気づかれないよう後をつける。

『やっぱりポロムだ!』2日ぶりに見る妻は輝いて神々しい。髪色を桃色から地毛の明るい茶に戻し、頭上でひとまとめした髪が動く度に揺れている見慣れた後ろ姿。妻がどこに行くのかと思えば、その先は自分も向かう執務室だ。『もしかすると俺に会いに来たのか?フッ、脅かしてみよう。ちよっとした余興だ、おかしな悲鳴でも聞かせてもらうか』驚いて慌てる様子が見られると楽しくなってきて、先ほど心配していた事もすっかり忘れたカインだった。ポロムが執務室の前に着いて立ち止まり、ドアを叩こうとした時にカインは後ろから近付いて『ここに何の用だ?貴様は誰だ?名を名乗れ!』と、低いドス声でポロムを両手で目隠しする。しかしポロムは『もう、仕方ないなあ。何やってるんですかカインさん、いつも同じ事するから驚きませんよ。私の後をつけていたでしょう?』落ち着いていて驚かない。『(あれ…そこはキャーッだろうが?)バレていたか…』『ふふふ。このイタズラな手を離してください、顔が見れないわ』カインは苦笑いし『これでいいか?』目隠ししていた両手を話す。『2日ぶりですね、カインさん。会いに来ました、今日はカニパーティの打ち合わせに呼ばれて、終わった後カインさんがいるか寄ってみました。』心の中で(そうのなのか?!嬉しいぞ…やはり俺達は新婚なのだな)と、感動するカインの目に写るは、こちらを振り向いて朗らかに笑うポロムが神っていて、ピッカピカの後光が眩し過ぎる。

『ああ。そっちは変わらないか?』『ええ。やっと会えました』2日ぶりの再会そうなのだ。きっと忙しさの余り若妻に寂しい思いをさせているだろう。執事のセバスチャンに妻の様子を聞くと、「旦那様がいなくても、奥様は元気に過ごしてますよ~昨日は邸の皆で焼き肉パーティをしました。楽しかったですなぁー何だか愛しの奥様を取ってしまって、どうもすみません。こちらは心配ないですから安心して下さい!そういえば…いや内緒にしましょう。女房に愛されて何より!よかったですなぁ~ワッハハハハ!!」そう聞きカインは、ポロムは元気でなによりだ。しかし会えないと頭の片隅で[亭主留守で妻は元気いい]とかいうどこかの言葉を思い出し、夫である自分の存在が忘れられてないか?とも心配していた。

カインは堅い顔でポロムを抱きしめた時、『ゲフゲフ、ゴホン!ラブラブ中に邪魔してすまんのう。喫煙所に行くからここを通りたいのじゃ、いいかの?』ハグハグ中な新婚夫婦の近くを、タバコと携帯用灰皿を持つ満面の笑顔のシドが立っていた。『シド?』『シドさん?』『フォフォフォ離れなくていいぞ~そのままでよいぞ。昔のセシルとローザもそうじゃった!仲が良いのは良きかな、良きかな。カイン、ポロムに会えて良かったのう。これはまた良いものが見れたわい!あのカインがのう~フォフォフォ』バイバイと手を振って歩くシドを見る、真っ赤な顔の二人であった。『場所を変えよう…』『そうですね…』

二人が向かったのは、空に浮かぶ三日月と煌めく無数の星が見れる城の最上階だ。バルコニーに出るとポロムは声を挙げ『わあっ、綺麗~』と大喜び。それを見て目を細めるカインは『ミシディア程ではないが、どうだ?ここはバロンで星がよく見える場所なんだ。まあ俺の選んだ場所だがな』『素敵です!この場所も星がよく見えますよ!』『そうか、喜んでくれてよかった。あのな』『はい?』『寒いなら…ここ空いてるぞ』恥ずかしくて自分の元に来いなど言えない、マントを広げた照れ屋のカインなのだ。戸惑う事もあるが、彼の気持ちがわかったポロムは『行きますよ。えい!』カインの胸元に飛び込んでいった。『フッ…』待ち構えたカインは満足そうな顔をし、優しくマントでポロムを包み抱きしめた。お互い見つめあい暫くの沈黙。それを破るようにポロムは『ふふっ、私も嬉しい』と言う。(可愛い。可愛くて…萌えて照れ死にしそうだ…)普段は厳しい隊長と呼ばれても、ポロムの前では純情になるカインなのだ。

ひと呼吸して『ゴホン!急だが、明日から3日間の休暇を取った。いや正確には取らされたんだ、これは国王夫妻の厳命なのだ!と』ポロムが心配そうな顔をすると、頭をポンポンし『心配するな、ただの休暇だ。ここのところ忙しくて録に話せず、お前を一人にさせてしまったから、休み中は思い出づくりと妻孝行してこいとな。それからセシル達に大笑いされたが…』『なんですか?』『ああ。お前に嫌われて、お前が俺の事を、その…忘れてるのかと思ってしまったんだ』ポロムには、真面目な顔で話すカインが一回りも年上と思えない程、同年代また年下の男の子を感じさせた。『ふふふ、そんな事言うなんて嫌だなぁ。私はカインさんを忘れてないし、嫌いって思ってないですよ。一人にさせてるって言うけど、私がミシディアにいた頃よりも多く会えてるもの。それに嫁ぐ前にミシディアを離れて、バロンで妻としてやっていけるか、不安な時があったけど…バロンの人たちが優しいから、いつも寂しいと思えないし、カインさんがいるから一人じゃありませんよ!』そんなポロムの言葉に、自分があれこれ思っていた事が滑稽で、恥ずかしいカインだった。『フッこんな旦那ですまない。俺の思い過ごしだった…』『大丈夫です』

先ほどセシル達から聞いた話に、『何を言ってるんだ?ポロムは城に来た時に、飛空挺が飛ぶのを見ると祈りをしているぞ。きっと、お前の無事を祈っているんだな』『そうなのよ、城の皆も微笑ましくて、皆ポロムにあなたの話をすると、とってもいい顔して聞いているんですって。ハイウインド様は幸せ者ねと言ってるのよ』『僕たち隊員にも優しいであります!時々、差し入れに手料理やお菓子を頂きます!男だらけの食べ盛りには、有難いです!』『ポロムはこう言ってたぞ。会えない時に必ず手紙を書いて置いてくれてる。素っ気ないけど弁当うまかったとか、ありがとうと書いてあると嬉しい。私、カインさんのお嫁さんでよかったって。お主バロン一の幸せ旦那じゃのう~フォフォフォフォ』『そうそう!ワハハハ』
などと自分には、ポロムが最強召喚獣や守り神に女神にも思え、天下一の嫁が誇らしかった。
  
『休暇の1日目はミシディアと、俺が世界中で最も星が美しいと自負する場所がある。そこにも行こう』
『ミシディアの皆に会うの久しぶりですね!あれ?次に行く所って…もしかするとあの山ですか?』

(ギクリンチョ!!)『さあ…さてな…行って見るまでの内緒だ。』『どこかな~?ふふふ楽しみです!』
『2日目は、エブラ-ナに行くか』『わ~エッジさんリディアさんと、子供達にも会うの楽しみです』

カインがポロムに見せたい[世界中で最も星が美しい]場所、そこは二人にとって深い関わりのある「試練の山」だ。先程の話で妻が場所を言った時は動揺し、おっとりしている様に見え、しっかり者で時に鋭い妻に下手な隠し事は止めよう!と思ったカインであった。(ホッ。バレなくてよかった…)

試練の山にいた頃。父を越える竜騎士になると山に登り、独り修行に明け暮れた十数年もの日々。心が疲れ自分が壊れそうになった時、草花や生い茂る木、鳥の鳴き声に四季折々の景色を愛で癒されたか。真っ暗の雄大な頂から見る無数の輝く星に圧倒し感動の涙を流し、幼馴染みと夢中になった昔話を懐かしみ、亡き両親から聴いた故郷の歌を口ずさみ、幾度も慰められただろう。迷いや困難に遭遇した時も見上げた夜空の星に励まされ、前に進む心の強さを貰ったのだった。幼き日もあの頃も今も。


山頂に着いた時、ポロムはどんな反応をするだろうか?きっと満開の笑顔を見せて、飛び跳ねんばかりに大喜びするだろう。いつも自分の側で隣で一緒にいてほしい。ここバロンに来てくれてありがとう、口にして言えないけど、大好きだ愛してる。そう想いを込めてカインはポロムを抱きしめキスをした。

『あの…せっかく会えたから、まだ帰りたくないです。暫く執務室にいてもいいですか?お仕事の邪魔しないので。』ポロムに上目づかいをされたら断れない。嬉しいカインの目には後ろに沢山のピンクの花を咲かせ、瞳を潤ませた『あなたの側にいさせてほしいのお願い』と甘えるポロムが写った。脳内で一瞬妄想して(うちのポロムは世界一可愛いぞー!!)と夜空に向かって、大声でおもいっきり叫びたい。

『ああ構わん、いていいぞ。今日中に仕事を終わらせるから待っていろ、それから邸に一緒に帰ろう』『はい、待ってます。カインさんの好きな干し芋を持ってきたから、お茶入れますね』ポロムが鞄から袋を出すと、カインは素早く取り上げて『あるのは7枚か、俺の分を多くな。美味しいものを独り占めとは、ポロムのくせに生意気だ』とニヤリと注文する。それにムッとしたポロムは『もう意地悪、1人3枚ずつで残りは半分ずつです!そんな事するなら、ミシディアから送ってもらうの止めますからね!』袋を取り返す。その様子が可笑しくて『ハハハ…ハハハハハ!』大笑いしたカインだった。

『笑わないで下さい!』『ハハハわかった、悪かったな。外は冷えるから執務室に戻るぞ』『あっ、待って』ポロムは慌てて先行くカインを追いかけると、待っていたカインの隣に並び手を繋いで階段を降りて行った。『3日目の予定はどうします?』『そうだな…お前と一緒にいたい、それだけだ』『私も同じです』『俺の希望は…こうなのだが、いいか?』『は?何を言ってるんですか…仕方ないなぁ』

この話は…世界一大切な可愛い妻を溺愛し、いつも妻が大好きな不器用な男の話だ。
天空の月星から淡い光りの祝福が、未来永劫ふたりを優しく照らしていくだろう。  
ささやかな幸せを祈っている様に。

trkeko at 14:37|PermalinkComments(0)